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会社規模区分の判定と評価方式|従業員数・総資産・取引金額の見方と注意点

11 分前
読了時間: 9分

自社株の原則的評価では、会社を大会社・中会社(大・中・小)・小会社の5段階に分け、段階ごとに類似業種比準価額と純資産価額の配合を変えます。判定の物差しは「総資産と従業員数」と「取引金額(売上高)」の2つで、どちらか上位の区分を採ります。従業員が70人以上いれば、それだけで大会社です。

※本記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいています。

同族株主が取得する株式の評価の全体像は「非上場株式の評価方法」にまとめています。規模の判定で間違えやすいのは、総資産・従業員数・取引金額の3つを別々の基準として当てはめてしまうことです。実際には、決まった順序で組み合わせて判定します。

区分が1段変わるだけで、計算式の配合が変わる

会社規模の区分と計算式は、財産評価基本通達178・179で次のように決まっています。

区分

Lの割合

1株当たりの評価額

大会社

―

類似業種比準価額(純資産価額のほうが低ければ選択可)

中会社の大

0.90

類似業種比準価額×0.90+純資産価額×0.10

中会社の中

0.75

類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25

中会社の小

0.60

類似業種比準価額×0.60+純資産価額×0.40

小会社

―

純資産価額(類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50を選択可)

中会社も、算式の類似業種比準価額を純資産価額に置き換える選択ができます(通達179(2)ただし書)。純資産価額のほうが低い会社では、この選択に意味があります。

類似業種比準価額は、上場している同業他社の株価を基準に、配当・利益・純資産の3要素を比べて算出する価額です(詳しくは「類似業種比準価額のしくみ」)。計算の最後に掛ける斟酌率も規模で変わり、大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5です(通達180)。

区分の違いが評価額に効くのは、多くの会社で類似業種比準価額が純資産価額を大きく下回るからです。国税庁が2026年4月の有識者会議に出した資料では、類似業種比準価額は中央値で純資産価額の約26%でした。類似業種比準価額の比重が高い上位の区分ほど、評価額は低くなりやすいわけです。

判定は2つの物差しで行い、上位の区分を採る

判定は、課税時期の直前に終了した事業年度(直前期)の数字で行います。手順は次の3段階です。

  1. 直前期末以前1年間の従業員数が70人以上なら、大会社で判定終了

  2. 「総資産価額(帳簿価額)」と「従業員数」をそれぞれ下の表に当てはめ、下位の区分を採る

  3. 2の区分と「取引金額」の区分を比べ、上位の区分を採る

わかりにくいのは、2では下位、3では上位を採る点です。総資産が大きくても従業員が少なければ物差しAでは上位に入りませんが、売上高が十分に大きければ、取引金額による上位の区分が優先します。

従業員数、総資産・従業員数、取引金額の順で大会社・中会社・小会社を判定するフローチャート

物差しA:総資産価額と従業員数

区分

卸売業

小売・サービス業

卸売業、小売・サービス業以外

従業員数

大会社

20億円以上

15億円以上

15億円以上

35人超

中会社の大(L=0.90)

4億円以上

5億円以上

5億円以上

35人超

中会社の中(L=0.75)

2億円以上

2億5,000万円以上

2億5,000万円以上

20人超

中会社の小(L=0.60)

7,000万円以上

4,000万円以上

5,000万円以上

5人超

小会社

7,000万円未満

4,000万円未満

5,000万円未満

5人以下

物差しB:直前期末以前1年間の取引金額

区分

卸売業

小売・サービス業

卸売業、小売・サービス業以外

大会社

30億円以上

20億円以上

15億円以上

中会社の大(L=0.90)

7億円以上30億円未満

5億円以上20億円未満

4億円以上15億円未満

中会社の中(L=0.75)

3億5,000万円以上7億円未満

2億5,000万円以上5億円未満

2億円以上4億円未満

中会社の小(L=0.60)

2億円以上3億5,000万円未満

6,000万円以上2億5,000万円未満

8,000万円以上2億円未満

小会社

2億円未満

6,000万円未満

8,000万円未満

出典:財産評価基本通達178・179をもとに当法人で再構成。

物差しAでは、従業員が35人以下だと総資産がいくら大きくても「中会社の中」が上限です。5人以下ならAは小会社です。

具体例で判定してみる

建設業(卸売業、小売・サービス業以外)で、直前期の総資産が4億円、従業員25人、売上高6億円の会社を考えます。

物差しAでは、総資産4億円は「中会社の中」(2億5,000万円以上5億円未満)、従業員25人も「中会社の中」(20人超35人以下)です。Aの結果は中会社の中です。物差しBでは、売上高6億円が「中会社の大」(4億円以上15億円未満)に当たります。上位を採るので、この会社は中会社の大(L=0.90)です。

翌期に売上高が3億8,000万円に落ちると物差しBも中会社の中になってLは0.75に下がり、類似業種比準価額が1株3,000円、純資産価額が1株1万2,000円なら、評価額は次のように動きます。

  • L=0.90:3,000円×0.90+1万2,000円×0.10=3,900円

  • L=0.75:3,000円×0.75+1万2,000円×0.25=5,250円

売上が減ったのに、株価は約35%上がります。

従業員が少なく資産の大きい会社では、判定が直感と食い違います。従業員2人で賃貸ビルを持つ不動産賃貸業の会社なら、総資産が10億円あっても、従業員5人以下なので物差しAは小会社です。賃料収入が1億円あれば物差しBで中会社の小(8,000万円以上2億円未満)になり、こちらが採用されます。こうした会社は総資産に占める土地等の割合も高いので、中会社として90%以上の基準で土地保有特定会社に当たらないかも確かめます(「純資産価額方式のしくみと含み益」参照)。

従業員数は在籍人数ではなく、労働時間で換算して数える

従業員数は、在籍者の頭数ではありません。通達178(2)の定めで、次のように計算します。

まず、直前期末以前1年間ずっと勤務していた従業員のうち、就業規則などで定めた週の労働時間が30時間以上の人を1人として数えます(継続勤務従業員)。それ以外の人、つまり期中に入社・退社した人や週30時間未満のパートタイマーは、1年間の労働時間の合計を1,800時間で割って人数に換算し、加算します。

例えば、継続勤務従業員が4人、パートタイマー3人の年間労働時間の合計が2,000時間なら、4人+2,000÷1,800≒5.1人です。国税庁の明細書の記載方法では、5.1人は「5人超」です。4.9人なら「5人以下」になります。わずか0.2人の差で区分が変わるので、境目に近い会社では給与台帳やタイムカードから労働時間を集計します。

役員は、役職によって扱いが分かれます。社長や理事長のほか、法人税法施行令71条1項1号・2号・4号の役員(代表取締役、副社長・専務・常務など職制上の地位のある役員、監査役・会計参与・監査等委員である取締役など)は従業員に含めません。逆にいえば、取締役営業部長のような使用人兼務役員は従業員として数えます。

出向者や派遣社員は、雇用関係と勤務実態で判定します(国税庁の質疑応答事例)。出向元との雇用関係が解消され出向先で雇用されている人は、出向先の従業員です。派遣社員は派遣元の従業員です。ただ、受け入れている派遣先も、勤務実態に応じて従業員数に含めて差し支えないとされています。

総資産は帳簿価額で、業種は売上の最も多い事業で決める

総資産価額は、直前期末の貸借対照表の帳簿価額の合計です。路線価などへの置き換えはしません。明細書の記載方法では、減価償却累計額を間接法で表示している場合は資産から差し引き、売掛金などに対する貸倒引当金は差し引かないとしています。前払費用や繰延資産、繰延税金資産も、決算書に資産として計上されていれば含めます。

取引金額は、直前期末以前1年間の「目的とする事業に係る収入金額」です。通常は売上高にあたり、受取配当金や雑収入のような営業外の収入は原則として含めません。金融業・証券業は収入利息と収入手数料で判定します。

業種は、取引金額のうち最も多い業種で決めます。卸売と小売を兼ねる会社なら、売上の多いほうです。どの業種が「卸売業」「小売・サービス業」「それ以外」に当たるかは、国税庁が公表している日本標準産業分類との対比表で確認します。迷いやすいのは不動産業です。不動産賃貸業・管理業は、サービス業に見えても「卸売業、小売・サービス業以外」に区分されています。

使うのは課税時期ではなく直前期の数字です。3月決算の会社で7月に相続が起きれば、判定に使うのはその年の3月期の決算です。

規模区分を誤ると、土地保有特定会社の判定も狂う

土地保有特定会社に当たるかどうかの基準も、規模区分で変わります。大会社なら土地等の割合70%以上、中会社なら90%以上で(通達189(3))、小会社でも総資産が一定額以上なら大会社または中会社の基準で判定されます。

申告評価額は、大会社ほど純資産価額に比べて低い

国税庁が有識者会議に示した実態把握では、令和4年分・5年分の申告を抽出して、純資産価額に対する申告評価額の割合を規模別に集計しています。中央値は大会社0.44倍、中会社0.50倍、小会社0.60倍で、規模が大きいほど評価額が相対的に低くなっていました。

同じ資料は、こうした方式間の乖離が誘因となり、恣意的に会社規模を変えて評価額を圧縮するスキームが確認されているとも指摘しています。規模区分の基準自体はこれまでも見直されてきました。Lの割合が0.90・0.75・0.60の3段階になったのは平成6年、大会社の従業員基準が100人以上から70人以上に下がったのは平成29年です。

有識者会議では規模区分そのものの廃止が議論されている

ここまで説明した区分判定が、将来も使われるとは限りません。国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」は、2026年8月20日の第5回で見直しの骨子を示し、大会社・中会社・小会社という規模区分を廃止して、一般の会社は規模によらず「残余利益方式」で評価する方向を打ち出しました。残余利益方式は、法人税法上の簿価純資産に、超過利益の現在価値を加減して株価を求める方法で、9月16日の第6回では加算期間5年・還元率8%とした場合の試算が示されました。

現行の申告評価額と比べると、評価額の中央値は大会社で大きく上がり、小会社では下がる会社が多いという結果です。ただ、試算は斟酌率の置き方で大きく動き、その水準はまだ決まっていません。

純資産価額方式は資産保有型の会社などに限る方向で、配当還元方式の対象も「特定の少数株主」に絞る案が出ています。報道では、2026年秋に取りまとめ、12月の税制改正大綱、2027年4月頃のパブリックコメントを経て2028年1月頃に適用という日程が伝えられています。骨子自体が最終的には税制改正のプロセスで決めるとしており、内容も時期も確定していません。それまでに行う相続・贈与は、現行の規模区分で評価します。

当法人に相談する前に手元で確認しておくとよいこと

判定には次の資料を使います。

  • 直前期の決算書(貸借対照表の総資産、減価償却累計額の表示方法)

  • 直前期の売上高の内訳(事業ごと・業種ごとの金額)

  • 直前期1年間の従業員名簿、就業規則上の週所定労働時間、パートタイマー等の労働時間の記録

  • 役員の役職と、使用人兼務の実態がわかる資料

  • 出向・派遣の契約書

従業員数が5人・20人・35人・70人の前後にある会社や、売上高が区分の境目に近い会社は、わずかな差で区分が変わり、評価額も大きく動きます。贈与の時期を考えるときは、どの期の決算で判定されるかも確かめておきます。

当法人では、決算書や給与台帳をもとに従業員数を集計し、規模区分の判定から類似業種比準価額・純資産価額の試算まで一貫してお手伝いしています。ご相談はお問い合わせページから受け付けています。

参考資料

 
 
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