法人の税務調査の流れと日頃の準備|事前通知から加算税・不服申立てまで
法人の税務調査の多くは、税務署から電話で事前通知があり、数日間の臨場を経て、結果の説明、修正申告または更正という順で終わります。なかでも経営者への影響が大きいのは、加算税の決まり方です。
同じ申告漏れでも、いつ・どのように是正したかで、加算税の割合は0%から40%超まで変わります。帳簿と証憑をいつでも説明できる状態にしておけば、臨場中の質問にその場で答えられ、事実関係の確認も早く進みます。
この記事の要点
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※本記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいています。
調査の前には原則として事前通知がある
税務職員が会社に出向いて帳簿を確認する「実地調査」の前には、税務署から納税者に次の事項が通知されます(国税通則法74条の9)。
調査を始める日時
調査を行う場所
調査の目的
対象となる税目
対象となる期間
対象となる帳簿書類など
顧問税理士が税務代理権限証書を提出していれば、その税理士にも通知が届きます。証書に「税理士への通知で足りる」旨の同意を書いておけば、通知は税理士だけに行われます。
国税庁の税務調査手続に関するFAQによると、事前通知は原則として電話で口頭により行われます。通知された日時や場所は、合理的な理由があれば変更を協議してもらえます。
FAQでは、病気や親族の葬儀のほか、業務上やむを得ない事情も例に挙げています。繁忙期と重なるなら、遠慮せず相談してかまいません。決算期の直前などは、よくある理由です。
例外として、事前に知らせると証拠の隠滅などのおそれがあると税務署が判断した場合は、通知なしで調査が始まることもあります。いわゆる無予告調査です。現金取引の多い業種などで見られます。
国税庁が2025年12月に公表した資料では、2024年7月〜2025年6月の法人税・消費税の実地調査は約5万4千件(前年比7.4%減)と減る一方、追徴税額は総額3,407億円と直近10年で最多、1件あたり634万2千円でした(AIの予測モデルで調査の必要度が高い法人を選んでいると説明しています)。書面や電話で見直しを求める「簡易な接触」(約8万5千件)は臨場を伴わず、調査通知とは扱いが異なります。
通知から結果説明までは1〜3か月ほど
会社によって違いはありますが、典型的な流れを図にまとめました。

臨場は中小法人で2〜3日程度が多い
日数は事前に示されません。国税庁は、日数は調査を始めてからの状況によるとしています。実務では、中小法人なら調査官1〜2名が2〜3日ほど来社するケースが多く見られます。
ただしこれは目安で、取引の規模や論点の数によっては臨場が延びたり、後日に追加の臨場が入ったりします。質問にその場で答えられないときは、記憶で答えず、確認して後日回答すると伝えてかまいません。
対象期間は直近3期分程度が通例です。法律上、税務署が更正できる期間は法定申告期限から原則5年で、偽りその他不正の行為があれば7年に延びます(国税通則法70条)。欠損金の額を変える更正なら10年です。
臨場初日の午前は、会社の沿革や事業内容、取引の流れを経営者から聞き取るのが一般的です。続いて帳簿類です。総勘定元帳や請求書、契約書、預金通帳の確認に移ります。
会計ソフトなどの電子データは、画面で見せる(提示)か、印刷物やデータの写しを渡す(提出)のが基本です。国税庁のFAQ(2026年7月一部改訂)では、e-Taxやオンラインストレージ、メールで提出する方法も示されています。
終わり方は是認・修正申告・更正の3つ
調査で問題が見つからなければ、税務署は「更正決定等をすべきと認められない」旨を書面で通知します。いわゆる是認です。ただし調査がいったん終わっても、新たな情報で誤りが疑われれば、同じ期間について再び調査を受けることがあります。
問題が見つかった場合、調査官は誤りの内容、金額、理由を説明し、多くの場合は自分で申告を直す修正申告を勧めます(国税通則法74条の11)。応じるかどうかは任意です。
ただ、修正申告と更正では、その後に取れる手続が違います。修正申告をするとその内容について不服申立てはできなくなりますが、法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求で減額を求められます。勧奨に応じない場合は、税務署長が処分として税額を決める「更正」を行い、その処分に対しては不服申立てが可能です。
修正申告に応じるかどうか迷ったときは、当法人でも個別にご相談を承っています(お問い合わせ)。
加算税は是正の時期と誤りの中身で変わる
修正申告や更正で税額が増えると、本税と延滞税に加えて加算税がかかります。期限内に正しく申告・納付しなかったことへの行政上のペナルティです(国税通則法65〜68条)。
種類 | 対象となる場面 | 調査通知前の自主的な是正 | 調査通知後・更正予知前 | 調査による更正等 |
過少申告加算税 | 期限内申告の税額が少なかった | なし | 5%(一部10%) | 10%(一部15%) |
無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 5% | 10%(一部15%・25%) | 15%(一部20%・30%) |
不納付加算税 | 源泉所得税を期限までに納めなかった | 5%(納税の告知を予知する前の自主納付) | 同左(調査通知による区分なし) | 10% |
重加算税 | 隠蔽・仮装があった | — | — | 過少・不納付35%、無申告40% |
表の「調査通知」は、先ほどの事前通知のうち税目と期間などが伝えられた時点を指し、ここを境に自主修正でも加算税がかかるようになります。過少申告加算税の「一部15%」は、増えた税額のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分に適用されます。
無申告加算税は、50万円超300万円以下の部分が20%、300万円を超える部分が30%です。不納付加算税の分かれ目は調査通知ではありません。納税の告知を予知する前に自ら納付したかどうかで決まり、予知前なら5%です。
重加算税は隠蔽・仮装が要件です。更正を予知しない自主的な修正申告(不納付なら告知を予知しない自主納付)には課されません。
近年の改正で帳簿不備と無申告の加算が重く
ここ数年、加算税は段階的に重くなっています。令和4年度改正では、調査で求められた帳簿を提示しなかった場合や、売上の記載が本来の2分の1未満しかない場合に、過少申告加算税・無申告加算税が10%、3分の2未満なら5%加算されるようになりました。
この加重の対象は法人税・地方法人税・消費税です。令和5年度改正では、無申告加算税に300万円超の部分の30%の区分が設けられ、前年・前々年にも無申告加算税や重加算税を課されている場合は、さらに10%加算されるようになりました。どちらも2024年1月1日以後に法定申告期限が来る申告から適用されています。
令和6年度改正では、隠蔽・仮装に基づいて更正の請求書を出した場合も重加算税の対象になりました(2025年1月1日以後に法定申告期限等が来るもの)。過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがあれば、重加算税にも10%が加算されます。
令和8年度税制改正の大綱には、法人の加算税割合を変える改正は含まれていません(納税環境整備は国税犯則調査のデジタル化が中心)。逆に軽くなる仕組みもあります。一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」を備えて事前に届出をしていれば、その帳簿に関する申告漏れの過少申告加算税が5%軽減されます。
延滞税は、遅れた日数に応じてかかる利息のような税金です。2026年中の割合は、納期限から2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎると年9.1%で、2025年(2.4%、8.7%)より上がっています。法人住民税や事業税にも、同じように加算金と延滞金がかかります。
処分に不服なら3か月以内に申し立てる
税務署長の更正などに納得できない場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税務署長への「再調査の請求」か、国税不服審判所長への「審査請求」のどちらかを選んで申し立てられます(国税通則法77条1項)。
再調査の請求は、処分をした税務署自身にもう一度見直してもらう手続です。不服が残れば次へ進みます。決定書の謄本が届いた日の翌日から1か月以内に審査請求ができます。審査請求は、税務署から独立した国税不服審判所が判断します。最初からこちらを選んでもかまいません。
裁判所に処分の取消しを求める訴訟は、原則として審査請求の裁決を経てからでないと起こせません。審査請求から3か月たっても裁決がない場合は、裁決を待たずに訴えを起こせます。訴訟の期限は、裁決を知った日から6か月以内です(行政事件訴訟法14条1項)。
日頃の準備は「保存」と「説明できること」に尽きる
調査で手間取る会社の多くは、税額の計算よりも、取引の中身を説明する資料が出てこないところで時間を取られます。
帳簿と証憑を7年間、すぐ出せる形で保存する
青色申告法人は、帳簿と、請求書・領収書・契約書などの取引書類を7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条)。欠損金が生じた事業年度は10年です。
2024年1月からは、メールやウェブで受け取った請求書などの電子取引データを、紙に印刷せず電子のまま保存することも義務になっています。帳簿を提示できなければ加算税が加重されることは前述のとおりです。保存場所と担当者を決めるところから始めてください。
指摘を受けやすい取引の根拠を残す
一般に、中小法人の調査でよく取り上げられるのは次のような取引です。
売上の計上時期のずれ
役員への給与や会社負担の私的な支出
交際費
実態の確認しにくい外注費
源泉所得税の徴収漏れ
役員報酬の決定は株主総会や取締役会の議事録で、外注費は契約書と成果物で、というように、取引ごとに「なぜこの処理なのか」を示す書類をそろえておきます。処理した本人には分かっていても、数年後の調査で同じように説明できるとは限らないからです。
誤りに気づいたら、調査通知の前に直す
申告の誤りに自分で気づき、調査通知の前に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。通知後でも、更正を予知する前に直せば5%で済みます。気づいた時点で申告内容を確かめ、直す必要があれば早めに修正申告を出してください。
書面添付制度を使う
税理士が申告書の作成過程や確認内容を記載した書面を添付する「書面添付制度」を使っていると、税務署は事前通知の前に、その税理士に意見を述べる機会を与えなければなりません(税理士法35条1項)。意見聴取だけで疑問が解消され、実地調査に進まないこともあります。
調査で問題が残らない状態は、将来の事業承継やM&Aでも評価されます。買収監査では過去の申告内容が確認されることが多く、処理の根拠資料が残っていれば説明の手間も減らせます(「中小M&Aの流れと売り手の事前準備」参照)。
当法人に相談する前に手元で確認しておくとよいこと
事前通知を受けた段階でご相談いただく場合は、次の点を手元にまとめておくと、初回の打合せで準備の方針まで決められます。
通知された調査の開始日時、場所、税目、対象期間、対象帳簿
対象期間の法人税・消費税の申告書と決算書、勘定科目内訳明細書
前回の調査の時期と、そのときの指摘事項
自社で気になっている取引や、処理に迷った取引
税務代理権限証書の提出状況(現在の顧問税理士の有無)
当法人は公認会計士・税理士として、調査の立会いや事前の論点整理、調査後の更正の請求・不服申立ての検討をお手伝いしています。日程の調整が要ることもあるため、通知を受けたら早めにご連絡ください(お問い合わせ)。
参考資料
e-Gov法令検索「国税通則法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」 https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan.htm
国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(2025年12月) https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/pdf/01.pdf
国税庁「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_01.pdf
財務省「令和6年度税制改正」(納税環境整備) https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2024_pdf/zeisei24_06.pdf
国税庁 タックスアンサーNo.9205「延滞税の計算方法」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
